頭が禿げるにも訳がある

もう16、17年位前だったと思います。当時私は30歳くらいで今と比べて髪の毛がフサフサしていた時代の話しです。当時、意中の女性がいました。年齢は20代前半くらいの方のようでした。朝出勤途中に歩いていて、何度もすれ違うことが多く、私にとって気になる存在でした。

スレンダーな長身の体型で、内面から優しさが滲み出ているような表情は私を釘付けにしました。昔大好きだった女性に雰囲気が似ていたので、すれ違う度に気になる存在になっていきました。

募る思いはありましたが、何故か朝の出勤途中出ですれ違うことがなくなりました。気が付いたのは4月のある日のことです。もし意中の女性が大学生であれば卒業したか、社会人であれば転職、引っ越したとか自分なりに色々考えこんでいました。

またどこかで会いたいと願っていると、数ヵ月してたまたま行ったファミリーレストランで接客の仕事をしていたのでした。それも私が働いている職場の近所のファミレスだったのです。私は嬉しくなって、このファミレスに通おうと決めました。

当時、ファミレスと言えば家族、友達、グループで行くのが主流で、今のおひとりさまというのが非常に少なかった時代でした。ひとりでファミレスに行くのが、はずかしい時代でした。はずかしながらもこの機会を逃したくないので、友人達に声を掛けてみました。「ファミレスで働いている女の子で、気になるのがいるので一緒に行ってくれないか?」冷やかし半分、渋々な気持ち半分で友人達は付き合ってくれました。

通い始めて5回目くらいだったと思います。僕の態度や仕草で、相手の女性に気持はバレバレだった気がします。それでも笑顔で私に接してくれました。たとえそれが営業スマイルであっても私にっては至福の時間でした。制服の胸のところに名札を付けていたので、彼女の名前を知ることができ、収穫はあったと思いました。

難点なのはファミレスに行くにはお金が掛ることでした。ハンバーグセットを1人分を注文しても1000円くらいするファミレスだったので、友人を連れて、何度も通える訳ではありません。友人から言わせると「もうちゃんと告白しろよ!」そんなことを言われてもどのようにして、思いを伝えて良いか私には分かりませんでした。

出勤途中すれ違っていた場所が会社の近所だったので、もしかすると会社の近くに彼女の家があると考えたのです。会社の近所には地図の掲示板にあって、彼女の同じ名字の家が確かにありました。ちょうど会社の真裏の丘に2階建ての一軒家があり、会社を見下ろすような光景で建っていました。距離で言うと150メートルくらいあった気がします。
会社の窓を開ければすぐそこに彼女の家が見えたのです。

的が定まり、彼女の家に直接行きたいのですが、当時、世の中では「ストーカー」いう言葉が使われだした頃でした。自分が突然、彼女の家に行くことはストーカーになる恐れがあるので、その考えはすぐに撤回しました。
しかし、思いを伝えたい気持ちがあるので、再び、彼女が働いていたファミレスを行くことになりますが、もう彼女は仕事をやめていました。出会うチャンスが減った気がしていて落ち込む日もありましたが、偶然、昼の休憩時間に窓を開け、ボーと彼女の家を見ていたら、彼女の家の駐車場からこちらに向けて、手を振る姿がありました。紛れもなく彼女の姿で、私がこの会社に勤めていることを知っていたのには驚きを感じました。

嬉しいというより、恥ずかしさの方が勝ってしまい、結果的に彼女を無視する行動を取ってしまいます。あと思えばなんて馬鹿なことをしたと気づくのですが、この半年後くらいに再びチャンスが訪れます。今度は会社の近所のスーパーでレジを叩いていました。本当にこれが最後だと思い、彼女が仕事を終えるころを見計らって告白に行きました。

「告白にきました!」僕の胸がはちきれんばかりに思いを伝えると、上目使いで「お断りします。」と非常に怒っているような態度をされてしまいました。彼女のことを思うと胃が痛くなるほどだったのに「何故?」という疑問符が頭をよぎります。今度は悲しさ、寂しさ、情けなさが募り、これを機に男女交際はどうしたらできるのか分からなくなり悩みました。

30代後半には気がつくと頭頂部がかなり薄くなってしまいました。過食症にもなってしまい、食生活が乱れたのも髪が薄くなる原因だったことでしょう。ストレスは髪に悪いというのは常識ですが、ストレスというものは人と人との軋轢から生まれるだけのものではないと思います。一人寂しく、彼女ができなくて悩むこともストレスなのではないでしょうか?

現在、47歳であれから誰ともお付き合いができていません。髪は白髪が増えてきていますが、毎日の頭皮マッサージにより、ほんの少しだけ髪が増えました。少し髪の毛が増えると何だか気持ちが前向きになれたので、今度は絶対に素敵な女性をゲットできるように努力します。