ねえ。俺って前世で何か悪い事でもしたん?

人には試練が必ず訪れる。それは決断であったり決別であったり人によって
様々であろう。僕に与えられた試練は「ハゲ」である。
冗談ではなく思春期真っ盛りでのハゲは辛い。
二十代で一番悩んだ事は?と聞かれれば「ハゲ」と胸を張って言える。
世界中の若ハゲの過半数はそう答えるであろう。

◆マッサージスタイル。
マッサージと聞くと普通の人は「肩」「腰」「足」などを連想するかと思う。
しかしハゲは「頭」を連想するのだ。

ハゲのマッサージは主に二種類に分けられる。
一番オーソドックスなスタイルは「悪魔スタイル」。
全ての手の指の間接を軽く折り曲げ
頭皮を揉むスタイルだ。
その手の形相(引っ掻く様な手の形)が名前の由来だ。

玄人は「魔貫光殺砲スタイル」を好む。
人差し指と中指をくっつけ指二本で頭皮を押していくというスタイルだ。
(※ここでの玄人というのは「ハゲの進行が著しいこと」を表しております。)

なぜ玄人が「魔貫光殺砲スタイル」を好むかというと、指は案外汚れていて
その汚れがマッサージ中に頭皮にへばり付き逆効果になってしまうという
事からである。

大概どこの育毛サイトでも書いてあるが、「頭皮固くないですか?それは頭皮の血行が悪く髪の育成を妨げています。」という一説だ。
全国のハゲは頭皮を触り「確かに!固い!やばい!」と焦るのだ。
頭皮なんて大体の人間が固いもんだが、僕も例外ではなく
「確かに!固い!やばい!」
と泣き叫んでいた。

◆絶対に真似しないで下さい。
しかし泣いてばかりもいられない。泣いても髪は戻らない。
それよりも早急な対応が必要だと思い立った。

ちなみに僕は行動力がない。しかし「髪」が絡むと信じられないほどの
行動力が生まれる。その行動力を日常でも発揮出来れば相当の大物になっていたであろう。

僕は検索エンジンに「頭皮 血行 良くなる」と打ち込んだ。
しかし得られる情報の殆どが先述したマッサージの事ばかりで
目新しい情報を得られなかった。
時間も経過し、いよいよ現実逃避でもしようかと思った矢先、
とんでもない情報を得る事になる。

「頭皮に剣山を刺すと血行が良くなる。」

これは凄い情報だ。受け取り方は違うが今でもその情報は凄いと思う。
その情報によるとあくまで軽く頭皮に剣山を刺す事により滞留した血液を
潤滑にするという理屈である。
しかし文末に※絶対に真似しないで下さい。の一文。
僕は思った。「挑戦しない人間に勝利はない」と。

◆死んでないのに地獄巡り。
剣山は意外とすぐに手に入った。
「100均恐るべし。」と思いながら、今から行う行為に対して
恐るべかなかったのが今でも不思議である。

さっそく剣山を手に取り軽~く頭に突き刺した。
「んぐ…あ、あ、あ、あ…」
頭から血が流れた。痛いなんてもんじゃない。
針の山に頭から飛び込むようなものだ。
流石に二発目をやる前に我に返ったが
時既に遅し。頭から血を流す姿はまさに血達磨であった。